
改善したい点は見えているのに社内の承認が下りない、あるいはGA4を開いても何を直せばよいのか分からない——サイト改善で止まるのは、たいていこのどちらかです。
サイト改善の解説記事の多くは、分析して課題を見つけ、仮説を立てて実行し、効果を測るという手順を示しています。手順としては正しいのですが、実務ではその前後で止まります。
手前では「そもそも何を改善すべきか分からない」、後ろでは「改善案はあるが予算も承認も取れない」という壁があるためです。
本記事では、改善点を見つける3つのアプローチを解説します。アクセス解析では分からない離脱の理由を、ユーザーに直接聞く方法も扱いました。そのうえで、複数出てきた改善案の優先順位をどう決めるか、社内で承認を得るための提案書に何を書くかまで扱いました。あわせて、改善したつもりが数値を下げてしまう「改悪」への備えにも触れます。
読み終えるころには、何から手をつけるかを決め、それを社内に提案できる状態になります。
サイト改善とは|リニューアルとの違い
改善で止まるのは手順ではありません。その前後です。
(参考文献:https://semrush.jp/)
「何を直すか決められない」と「決めたが社内で通らない」。この2点が実務での壁になります。
改善の対象は「集める」と「動かす」の2つ
サイト改善は、2方向に整理できます。
|
方向 |
目的 |
主な打ち手 |
|---|---|---|
|
集める |
流入を増やす |
検索対策・コンテンツ追加・広告 |
|
動かす |
来た人を行動につなげる |
導線・CTA・フォームの改善 |
この2つを分けて考えないと、改善案が混ざって優先順位がつかなくなります。
「流入が少ない」と「流入はあるがCVしない」では、打つべき手がまったく違います。同時に両方を追うと、どちらも中途半端になります。
まず自社がどちらの課題を抱えているかを確認してください。判断の手順は第2章で扱います。
リニューアルとの違いと使い分け
費用もリスクも大きく異なります。
|
項目 |
改善 |
リニューアル |
|---|---|---|
|
対象 |
既存サイトの一部 |
サイト全体 |
|
費用 |
数万円〜数十万円 |
数十万円〜数百万円 |
|
期間 |
数日〜数週間 |
2〜6か月 |
|
検索評価へのリスク |
ほぼない |
URLが変わると失う場合がある |
|
社内調整 |
小さい |
大きい |
多くの課題は、改善で解決します。
問い合わせが少ない、情報が見つけにくい、特定ページの離脱が多い。これらは該当箇所の改修で対応できることがあります。
リニューアルの要否判断は「ホームページリニューアルの失敗」記事で扱っています。費用については「ホームページリニューアルの費用相場」記事をご参照ください。
改善が成果につながる仕組み
1回の変更で大きく変わることは、多くありません。
|
1回の改善 |
積み上げた場合 |
|---|---|
|
CVRが0.1ポイント上がる |
10回で1.0ポイント上がる |
|
変化が誤差に見える |
明確な差になる |
小さな改善の積み上げで成果が動きます。
だからこそ、続けられる形にすることが重要になります。
1回で終わる改善では、投じた工数に見合いません。続けるには、社内の理解と体制が要ります。この点は第8章と第12章で扱います。
サイト改善の目的と見るべき指標
指標を並べる前に、目的を決めてください。
(参考文献:https://ahrefs.com/ja)
目的を1つに絞ってから指標を選ぶ
目的が曖昧だと、見る指標も打ち手も決まりません。
|
目的 |
見る指標 |
打つ手 |
|---|---|---|
|
CVを増やす |
CVR・CV数・フォーム完了率 |
導線・CTA・フォーム |
|
流入を増やす |
セッション・表示回数・順位 |
コンテンツ・検索対策 |
|
認知を広げる |
指名検索・直接流入 |
発信・露出 |
同時に両方を追うと、どの改善が効いたのか分からなくなります。
流入施策とCV施策を同時に打った場合、CV数が増えても原因を特定できません。どちらか一方に絞ってください。
KPIの設計や目標値の決め方は「コンテンツマーケティングのKPI」記事で扱っています。ここでは改善に使う指標の説明に限定します。
改善のために見る指標
各指標に「これが悪いときに疑うこと」を添えます。
|
指標 |
見るもの |
悪いときに疑うこと |
|---|---|---|
|
表示速度 |
ページの読み込み時間 |
画像の重さ・スクリプトの量 |
|
直帰率 |
1ページで離れた割合 |
ファーストビュー・流入の質 |
|
滞在時間 |
読まれている時間 |
内容の分かりにくさ・情報不足 |
|
CVR |
成果につながった割合 |
導線・フォーム・訴求 |
|
流入経路 |
どこから来たか |
特定経路への依存 |
|
流入キーワード |
どんな言葉で来たか |
検索意図とのずれ |
|
使用デバイス |
PCかスマートフォンか |
デバイス別の表示崩れ |
|
訪問のタイミング |
曜日・時間帯 |
対象層とのずれ |
指標の定義を覚えることが目的ではありません。
数値が動いたときに何を疑うかが分かれば、改善に進めます。
指標は上流から順に見る
流入→回遊→CVの順に見ると、どこで詰まっているかが特定できます。
|
順序 |
見る指標 |
正常なら次へ |
|---|---|---|
|
① |
セッション数・流入経路 |
流入は足りている |
|
② |
直帰率・回遊率・滞在時間 |
読まれている |
|
③ |
CVR・フォーム完了率 |
行動につながっている |
CVRだけを見て判断しないでください。
CVRが低いとき、原因が導線にあるとは限りません。そもそも狙っていない層が流入している場合もあります。
|
状況 |
原因 |
打つ手 |
|---|---|---|
|
流入が増えCVRが下がった |
流入の質が変わった |
流入経路を見直す |
|
流入は同じでCVRが下がった |
ページ側の問題 |
導線・訴求を見直す |
上流から順に確認すれば、この切り分けができます。
サイト改善点の見つけ方|3つのアプローチ
数値・行動・声の3方向から見ます。
(参考文献:https://moz.com/)
多くの解説は「アクセス解析で分析する」とだけ書いていますが、それだけでは分からないことがあります。
アプローチ1|数値から見つける
アクセス解析で、どこで落ちているかを特定します。
|
見る項目 |
分かること |
|---|---|
|
ページ別の離脱率 |
どのページで離れているか |
|
フォームの到達率・完了率 |
入力前か入力中か |
|
流入経路別のCVR |
どの経路の質が高いか |
|
デバイス別の数値 |
特定環境での問題 |
|
検索キーワード別の動き |
意図とのずれ |
「どこで」落ちているかは分かります。
しかし「なぜ」かは分かりません。
離脱率が高いページがあっても、情報が足りないのか、分かりにくいのか、そもそも対象外の人が来ているのか。数値だけでは判断できません。
アプローチ2|ユーザーの行動から見つける
ヒートマップで、読まれ方を可視化します。
|
見るもの |
分かること |
|---|---|
|
スクロールの到達率 |
どこまで読まれているか |
|
クリックされた箇所 |
何に関心があるか |
|
注目されている領域 |
どこを見ているか |
数値では分からない読まれ方が見えます。
「離脱率が高い」という数値の中身が分かります。「そもそも下まで読まれていない」のか「読まれた末に離れている」のかを区別できます。
ただし、ここでも理由までは分かりません。
なぜ途中で読むのをやめたのか。この点は次のアプローチでしか分かりません。
アプローチ3|ユーザーに直接聞く
「なぜ」が分かる唯一の方法です。
|
手段 |
得られること |
|---|---|
|
サイト上のアンケート |
離脱の理由・探していた情報 |
|
ユーザーテスト |
操作中のつまずき |
|
問い合わせ内容の分析 |
分からなかったこと |
|
営業へのヒアリング |
商談で聞かれる質問 |
最後の行が最も低コストです。
営業が繰り返し説明していることは、サイトに書かれていない情報です。1時間の聞き取りで、改善点が複数見つかります。
アンケートの具体的な方法は、次章で扱います。
3つを組み合わせて仮説にする
1つだけでは、仮説の精度が上がりません。
|
順序 |
やること |
得られるもの |
|---|---|---|
|
① |
数値で当たりをつける |
どこに問題があるか |
|
② |
行動で確かめる |
どう読まれているか |
|
③ |
声で理由を知る |
なぜそうなるのか |
この順序で進めると、仮説が具体的になります。
具体例で示します。
|
段階 |
分かったこと |
|---|---|
|
数値 |
料金ページの離脱率が70% |
|
行動 |
料金表の手前で8割が離脱している |
|
声 |
「自社の規模だといくらか分からない」 |
この3つが揃うと、打つ手が決まります。
料金表を規模別に分ける、または問い合わせへの導線を料金表の手前に置く。推測ではなく、根拠のある改善案になります。
勘と経験だけで判断している状態の対極が、この進め方です。
アンケートで「なぜ」を聞く方法
アクセス解析の穴を埋める唯一の方法です。
(参考文献:https://webtan.impress.co.jp/)
数値だけでは理由が分からない
同じ「離脱率70%」でも、原因は複数考えられます。
|
考えられる原因 |
打つ手 |
|---|---|
|
探している情報がなかった |
情報を追加する |
|
情報はあるが見つけられなかった |
構成・導線を変える |
|
内容が分かりにくかった |
表現を見直す |
|
そもそも対象外の人が来ていた |
流入経路を見直す |
|
目的を達成して満足した |
改善は不要 |
最後の行に注意してください。
離脱が必ずしも問題とは限りません。知りたいことが分かって帰った場合、それは成功です。
推測で改善すると、外れる確率が高くなります。
何を聞けばよいか|質問項目の例
5つの質問で、必要な情報が集まります。
|
# |
質問 |
形式 |
分かること |
|---|---|---|---|
|
① |
何を探しに来ましたか |
選択式 |
訪問の目的 |
|
② |
目的の情報は見つかりましたか |
選択式 |
達成できたか |
|
③ |
見つからなかったのは何ですか |
自由記述 |
不足している情報 |
|
④ |
分かりにくかった点はありますか |
自由記述 |
表現・構成の課題 |
|
⑤ |
他社と比較していますか |
選択式 |
検討の段階 |
選択式と自由記述を組み合わせてください。
自由記述だけにすると集計できません。選択式だけにすると、想定外の理由を拾えません。
①と②は必ず選択式にしてください。この2つが集計できると、どの目的の人が達成できていないかが分かります。
設問は5問以内に抑えてください。多いと回答されません。
アンケートを実施するときに気をつけること
回答の読み方に前提があります。
|
注意点 |
内容 |
|---|---|
|
回答者に偏りがある |
関心が高い人が答えやすい |
|
回答数が少ないと判断できない |
数件では傾向とは言えない |
|
表示のタイミング |
早すぎると離脱を招く |
|
設問の作り方 |
誘導的な聞き方をしない |
1行目が最も重要な前提です。
答えてくれるのは、そのサイトに関心を持っている人です。すぐ離脱した人の理由は、アンケートでも拾えません。
全体の傾向とは限らないことを前提に読んでください。
3行目も実務的な注意です。
ページを開いた直後にアンケートを出すと、それ自体が離脱の原因になります。一定時間の滞在後、または離脱しようとした時点で表示する設計が一般的です。
サイト改善の進め方【6ステップ】
手順を6つに整理します。
(参考文献:https://www.searchenginejournal.com/)
STEP1|目的と現状の数値を確認する
改善前の数値を記録してください。
|
記録する項目 |
|---|
|
対象ページのセッション数 |
|
直帰率・離脱率 |
|
CVR・CV数 |
|
フォーム到達率・完了率 |
|
記録した日付 |
これがないと、効果を検証できません。
「改善したが良くなったか分からない」という状態は、比較対象を残していないことが原因です。
第9章の改悪にも気づけなくなります。
STEP2|第3章の3つのアプローチで課題を洗い出す
この段階では絞りません。
数値・行動・声の3方向から、出せるだけ出してください。
|
やること |
|---|
|
数値から気になる箇所を挙げる |
|
ヒートマップで確認する |
|
アンケートや営業ヒアリングから拾う |
|
すべて一覧に書き出す |
絞るのは次のステップです。
この段階で絞ると、思い込みで候補を落とすことになります。
STEP3|優先順位をつける
洗い出した候補から、着手するものを決めます。
多くの解説では「優先順位の高いものから」とだけ書かれています。決め方は第6章で扱います。
STEP4|仮説を立てて変更内容を決める
「何をどう変えると、どの指標がどうなるはずか」を言語化してください。
|
仮説の形 |
記載例 |
|---|---|
|
現状 |
料金ページの離脱率が70% |
|
原因の仮説 |
規模別の料金が分からないため |
|
変更内容 |
従業員規模別の料金表を追加する |
|
期待する結果 |
離脱率が60%以下になる |
仮説がないと、結果が出ても何が効いたか分かりません。
「なんとなく良さそうだから変えた」では、次に活かせません。仮説どおりなら再現でき、外れたなら見立てが違ったと分かります。
STEP5|実行し、判断する時期を先に決める
変更する前に、いつ判断するかを決めてください。
|
決めること |
|---|
|
判断する日 |
|
判断に必要なデータ量(セッション数・CV数) |
|
比較する対象(変更前の同期間) |
決めていないと、2つの誤りが起きます。
|
誤り |
起きること |
|---|---|
|
良い結果が出るまで待つ |
判断が先延ばしになる |
|
数日で判断する |
誤差を効果と誤認する |
アクセス数が少ないサイトほど、期間が必要になります。
月100セッションのページで、数日のデータから判断することはできません。
STEP6|結果を記録して次につなげる
効いた施策も、効かなかった施策も記録してください。
|
記録する内容 |
|---|
|
何をいつ変えたか |
|
変更前後の数値 |
|
仮説は当たったか |
|
次に何を試すか |
記録がないと、担当者が変わったときに同じ検証を繰り返すことになります。
効かなかった施策の記録も価値があります。「一度試して効果がなかった」という情報は、無駄な再実施を防ぎます。
改善案が複数あるとき、何から着手するか
実務ではここで手が止まります。
(参考文献:https://www.bodhi.co.jp/)
全部やろうとすると何も進まない
改善候補は、洗い出すほど増えます。
|
状態 |
起きること |
|---|---|
|
20個の候補に同時着手 |
どれも中途半端になる |
|
効果検証もできない |
何が効いたか分からない |
|
工数が分散する |
完了するものがない |
リソースは限られています。
順序を決めることが、実行の前提になります。
3つの軸で優先度を決める
感覚ではなく、スコアで決めてください。
|
軸 |
内容 |
評価の方法 |
|---|---|---|
|
①影響の大きさ |
そのページの流入量とCVへの近さ |
大3・中2・小1 |
|
②実行の手間 |
すぐ変えられるか、開発が必要か |
小3・中2・大1 |
|
③検証のしやすさ |
結果が早く出るか |
早3・中2・遅1 |
3つの合計点で順序を決めます。
具体例で示します。
|
改善案 |
①影響 |
②手間 |
③検証 |
合計 |
|---|---|---|---|---|
|
フォームの項目を減らす |
3 |
3 |
3 |
9 |
|
CTAの文言を変える |
2 |
3 |
3 |
8 |
|
料金ページに規模別表を追加 |
3 |
2 |
2 |
7 |
|
サイト全体の構造を変更 |
3 |
1 |
1 |
5 |
上から順に着手すれば、迷いません。
②の評価が逆になっている点に注意してください。手間が小さいほど高得点です。
最初に手をつけるべきもの
手間が小さく、影響が大きいものからです。
|
着手しやすい改善 |
理由 |
|---|---|
|
文言の変更 |
すぐ変えられる |
|
CTAの配置と文言 |
影響が大きい |
|
フォームの項目削減 |
CVに直結する |
|
不要な要素の削除 |
開発が不要 |
成果が早く出るものから着手してください。
理由は2つあります。検証のサイクルが早く回ることと、社内の理解が得られやすいことです。
小さな成果を先に出すと、次の改善への予算や工数を確保しやすくなります。この点は次章の提案書と接続します。
サイト改善の具体的な施策
改善候補の一覧として提示します。各施策の詳細は既存記事で扱っています。
流入を増やす施策
|
施策 |
内容 |
|---|---|
|
既存ページの改善 |
順位が中位の記事を強化する |
|
コンテンツの追加 |
検索意図に合う内容を用意する |
|
タイトル・説明文の見直し |
クリック率を上げる |
|
内部リンクの整理 |
重要なページへの流れを作る |
新規作成より、既存ページの改善が早く効きます。
すでに表示されているページは、検索エンジンに認識されています。ゼロから作るより短期間で順位が動きます。
キーワード設計は「コンテンツマーケティングのキーワード選定」記事で扱っています。
回遊を促す施策
|
施策 |
内容 |
|---|---|
|
内部リンクの追加 |
関連する情報へつなぐ |
|
ナビゲーションの整理 |
探しやすくする |
|
関連コンテンツの提示 |
次に読むものを示す |
|
パンくずリストの設置 |
現在地を分かりやすくする |
1ページで完結させないことが基本です。
読み終えた人に次に見るものがなければ、そこで離脱します。次の行動を用意してください。
コンバージョンにつなげる施策
|
施策 |
内容 |
|---|---|
|
CTAの配置と文言 |
押す理由を伝える |
|
フォームの項目削減 |
入力の負担を減らす |
|
導線の短縮 |
申し込みまでの手順を減らす |
|
中間CVの設置 |
問い合わせ以外の出口を用意する |
4行目が見落とされやすい打ち手です。
問い合わせだけが出口では、検討段階の人を取りこぼします。資料請求など、ハードルの低い接点を用意してください。
CV導線やCTAの詳細は「オウンドメディアのコンバージョン改善」記事、LPの改善は「LPOとは?」記事で扱っています。
表示速度・技術面の改善
|
施策 |
内容 |
|---|---|
|
画像の軽量化 |
ファイルサイズを圧縮する |
|
不要なスクリプトの整理 |
読み込みを減らす |
|
スマートフォンでの表示確認 |
実機で崩れを確認する |
|
計測ツールでの確認 |
速度の数値を把握する |
画像の軽量化だけで改善する場合があります。
高解像度の画像を多数配置すると、読み込みに時間がかかります。内容を見てもらう前に離脱されます。
改善を社内で通すための提案書の作り方
本記事最大の論点です。
(参考文献:https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja)
改善案があっても、社内で承認されなければ実行できません。
提案書が必要になる場面
すべての改善に提案書が要るわけではありません。
|
提案書が必要な場面 |
|---|
|
外部への発注が必要なとき |
|
開発の工数を確保するとき |
|
予算を取るとき |
|
複数部署の合意が必要なとき |
文言の変更程度なら、担当者の判断で実行できます。
しかし一定規模を超えると、必ず誰かの承認が必要になります。
その段階で「なんとなく良さそう」では通りません。根拠を示す必要があります。
提案書に入れる6つの項目
この6つが揃えば、判断材料になります。
|
# |
項目 |
書く内容 |
|---|---|---|
|
① |
現状の数値 |
対象ページのセッション・CVR・離脱率 |
|
② |
特定した課題とその根拠 |
数値・行動・声の3方向から示す |
|
③ |
改善案 |
何をどう変えるか |
|
④ |
期待できる効果 |
どの指標がどう変わる見込みか |
|
⑤ |
必要な費用と工数 |
外注費・社内の作業時間 |
|
⑥ |
効果を判断する時期 |
いつ結果を報告するか |
②が説得力を左右します。
第3章の3つのアプローチで根拠を示せると、推測ではないことが伝わります。
記載例を示します。
①料金ページは月800セッション、離脱率70%。②ヒートマップでは料金表の手前で8割が離脱。アンケートでは「自社の規模だといくらか分からない」という回答が最多。③従業員規模別の料金目安を追加する。④離脱率60%以下、問い合わせ月3件増を見込む。⑤社内作業4時間、外注費なし。⑥1か月後に数値を比較して報告する。
⑥を入れてください。
判断の時期が示されていないと、「やってみないと分からない」という印象を与えます。
決裁者が見ているのはどこか
知りたいのは3点だけです。
|
決裁者の関心 |
提案書のどこで答えるか |
|---|---|
|
いくらかかるのか |
⑤必要な費用と工数 |
|
何が良くなるのか |
④期待できる効果 |
|
外れたらどうするのか |
⑥効果を判断する時期 |
施策の詳細な説明より、この3点に答えるほうが通りやすくなります。
技術的な内容を詳しく書いても、決裁者の判断材料にはなりません。必要なのは投資判断の材料です。
3行目が特に効きます。
「1か月後に効果がなければ元に戻します」と書けると、決裁者側のリスクが下がります。判断を後戻りできる提案は、承認されやすくなります。
予算がつかない場合に書けること
費用をかけずにできる範囲を先に実行してください。
|
無料でできる改善 |
|---|
|
文言・見出しの変更 |
|
CTAの配置と文言の変更 |
|
フォームの不要項目の削除 |
|
内部リンクの追加 |
|
画像の軽量化 |
その結果を根拠に、次を提案できます。
|
提案の順序 |
|---|
|
①費用をかけずにできる改善を実行する |
|
②数値の変化を記録する |
|
③その実績を根拠に投資を提案する |
「まず自社でできる範囲でやってみて、効果が出たら投資する」という段階的な提案は通りやすくなります。
いきなり数十万円の提案をするより、実績を示してから提案するほうが確実です。
改善が「改悪」になることもある
変更した結果、数値が下がることは頻繁に起きます。
良かれと思った変更で数値が下がる
具体例を挙げます。
|
変更 |
意図 |
起きたこと |
|---|---|---|
|
デザインを整理した |
見やすくする |
必要な情報が見つけにくくなった |
|
フォームの項目を減らした |
入力の負担を減らす |
質の低い問い合わせが増えた |
|
情報量を減らした |
すっきりさせる |
判断材料が不足した |
|
CTAを増やした |
行動を促す |
押し付けがましくなった |
変更そのものは正しくても、別の指標が悪化することがあります。
2行目が典型です。
フォームの項目を減らせばCV数は増えます。しかし商談化率が下がれば、営業の工数が無駄になります。
CV数だけでなく、その後の指標も確認してください。
判断を誤らせる要因
変更直後の数値には、別の要因が混ざります。
|
要因 |
内容 |
|---|---|
|
季節変動 |
業界の繁忙期・閑散期 |
|
外部要因 |
競合の動き・広告の停止 |
|
サンプル数 |
数日では誤差が大きい |
|
曜日の偏り |
平日と休日で傾向が違う |
アクセス数が少ないサイトほど、誤りやすくなります。
月100セッションのページで、3日間のデータから判断することはできません。数件の差が、大きな変動に見えます。
第5章のSTEP5で決めた判断時期まで待ってください。
いつでも変更を取り消せるようにする
実務で最も重要な備えです。
|
やること |
|---|
|
変更前の画面をキャプチャで残す |
|
変更前の数値を記録する |
|
変更内容と日付を記録する |
|
元に戻す手順を確認しておく |
変更は1つずつが原則です。
複数箇所を同時に変えると、数値が下がったときに何が原因か特定できません。すべてを戻すことになり、良かった変更まで失います。
|
変更の仕方 |
数値が下がったとき |
|---|---|
|
1つずつ変える |
原因を特定できる |
|
まとめて変える |
特定できず全部戻すことになる |
急ぎたい場合でも、この原則は守ってください。
サイト改善で使う分析ツール
多くの場合、無料の範囲で足ります。
まず無料で使えるもの
3つあれば、課題の特定はできます。
|
ツール |
分かること |
用途 |
|---|---|---|
|
GA4 |
流入・行動・CV |
数値から課題を見つける |
|
Search Console |
検索での表示・順位・クリック率 |
流入前の状況を見る |
|
PageSpeed Insights |
表示速度 |
技術面の課題を確認する |
多くの場合、課題の特定はこの範囲で足ります。
有料ツールを検討する前に、この3つを使い切ってください。
行動を見るツール・検証するツール
必要になった段階で追加してください。
|
ツール |
できること |
導入の目安 |
|---|---|---|
|
ヒートマップ |
読まれ方の可視化 |
月1,000セッション以上 |
|
A/Bテストツール |
複数案の比較 |
CV数が月数十件以上 |
|
EFOツール |
フォームの詳細分析 |
フォーム到達数が一定以上 |
2行目に注意してください。
A/Bテストは、アクセス数が一定以上ないと有意な判断ができません。CV数が月数件の状態では、差が偶然の範囲を超えません。
ヒートマップには無料プランがあるものもあります。まず無料の範囲で試してください。
AIを改善に使う場合
道具としての位置づけを整理します。
|
使えること |
任せられないこと |
|---|---|
|
改善案の洗い出し |
どれを優先するかの判断 |
|
文言の複数パターン作成 |
自社に合うかの判断 |
|
競合ページの構成整理 |
数値に基づく意思決定 |
|
提案書の下書き |
根拠となるデータの解釈 |
判断そのものを任せるものではありません。
自社の数値やユーザーの実態を知らないため、一般論としての改善案しか出てきません。
有効な使い方は、案の量を増やすことです。
CTAの文言を10パターン出す、といった作業には向いています。その中からどれを選ぶかは、自社のデータで判断してください。
新しいツールを検討する前に
無料ツールで出せる情報を使い切っていますか。
|
確認すること |
|---|
|
GA4のコンバージョン設定は済んでいるか |
|
Search Consoleと連携しているか |
|
ページ別の離脱率を確認したか |
|
フォームの到達率と完了率を分けて見ているか |
|
PageSpeed Insightsで速度を測ったか |
これらが未実施のまま新しいツールを入れても、見る画面が増えるだけです。
判断は変わりません。まず既存の範囲を使い切ってください。
当社はツールを販売する立場ではないため、この点を率直にお伝えしています。
サイトの種類別に見る改善のポイント
サイトの種類によって、見るべき点が変わります。
BtoBサイト|検討期間の長さを前提に設計する
その場で決まらないことが前提です。
|
やること |
|---|
|
資料請求など中間的な接点を用意する |
|
検討段階に応じた情報を配置する |
|
事例・実績を充実させる |
|
稟議に使える資料を提供する |
問い合わせだけを出口にしないでください。
検討段階の人は、いきなり問い合わせません。ハードルの低い接点が必要になります。
BtoBの購買プロセスの詳細は「BtoBの購買プロセス」記事で扱っています。
ECサイト|カートまでの離脱を減らす
各段階で離脱率を見てください。
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段階 |
見る指標 |
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商品ページ |
閲覧数・カート追加率 |
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カート |
カートからの離脱率 |
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入力画面 |
入力完了率 |
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決済 |
決済完了率 |
どの段階で落ちているかで、打つ手が変わります。
カートに入れた後の離脱が多い場合、送料や決済方法が要因であることがあります。商品ページの改善では解決しません。
採用サイト|応募後のミスマッチまで見る
応募数だけを見ないでください。
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見る指標 |
確認すること |
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応募数 |
母数は足りているか |
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選考に進む割合 |
質は合っているか |
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辞退率 |
期待とのずれはないか |
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入社後の定着 |
情報は正確だったか |
良い面だけを見せると、応募は増えますがミスマッチも増えます。
求められる水準や大変な部分も含めて伝えると、応募数は減りますが適合度は上がります。
コーポレートサイト|目的が複数あることを前提にする
訪問者が複数の層に分かれます。
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訪問者 |
知りたいこと |
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見込み顧客 |
サービス内容・実績 |
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既存の取引先 |
会社情報・連絡先 |
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求職者 |
事業内容・社風 |
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投資家・金融機関 |
業績・経営情報 |
誰向けの改善なのかを決めてから着手してください。
全員に向けて改善しようとすると、どの層にも合わない構成になります。
まず主要な訪問者を1つに絞り、その層の導線から改善してください。
サイト改善が進まない・成果が出ない原因
横断的な原因を4つ挙げます。
勘と経験だけで判断している
根拠のない改善は、外れる確率が高くなります。
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状態 |
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「見にくいから直そう」で変更する |
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社内の意見だけで判断する |
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数値を見ずに施策を決める |
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競合を真似して変更する |
第3章の3つのアプローチで根拠を作ってください。
数値・行動・声の3方向から確認すれば、推測ではない改善案になります。
見た目だけを変えている
デザインの刷新は、社内で評価されやすい改善です。
目に見える変化があるため、「新しくなった」と実感されます。
しかし情報の中身や導線が変わっていなければ、数値は動きません。
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変わったこと |
変わっていないこと |
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色使い・レイアウト |
掲載している情報 |
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見た目の印象 |
導線の構造 |
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写真・アイコン |
訴求の内容 |
改善の目的が「見た目を新しくする」なら問題ありません。
CVを増やす目的なら、中身の変更が必要です。
1回やって終わりになっている
改善は積み上げで効きます。
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状態 |
結果 |
|---|---|
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1回改善して終了 |
効果が限定的で、評価もされない |
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継続的に改善 |
積み上がって差が出る |
1回で大きく変わることは多くありません。
第1章で述べたとおり、小さな改善の積み上げで成果が動きます。
続く形にすることが前提です。月1回でも構いません。頻度より継続を優先してください。
担当者が1人で抱えている
判断も実行も1人に集中している状態です。
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起きること |
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その人の異動や繁忙で止まる |
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判断の理由が共有されない |
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過去の検証結果が失われる |
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後任が一から始めることになる |
記録を残す運用にしてください。
第5章のSTEP6で述べたとおり、変更内容と結果を記録しておけば、担当者が変わっても継続できます。
改善の判断基準も文書化してください。第6章の3軸があれば、他の人でも同じ判断ができます。
サイト改善で担当者から多い質問
どこから手をつければよいですか
手間が小さく、影響が大きいものからです。
文言の変更、CTAの配置、フォームの項目削減。これらは開発が不要で、CVに近い箇所です。
改善候補が複数ある場合は、影響の大きさ・実行の手間・検証のしやすさの3軸でスコア化してください。手順は第6章にまとめました。
どのくらいで数値は動きますか
施策によって異なります。
CVR系の改善は数週間、検索流入に関わる改善は数か月と幅があります。アクセス数が少ないサイトほど、判断までの期間が長くなります。
具体的な期間を約束することはできません。着手前に判断する時期を決めておいてください。第5章のSTEP5をご確認ください。
費用をかけずにできる改善はありますか
あります。
文言の変更、CTAの配置と文言、フォームの不要項目の削除、内部リンクの追加、画像の軽量化。これらは無料ツールと自社作業で完結します。
まず費用をかけずにできる範囲を実行し、その結果を根拠に投資を提案するという進め方が現実的です。第8章をご確認ください。
改善したら数値が下がりました
まず変更前の数値と比較してください。
判断する前に、期間と外部要因を確認します。数日のデータでは誤差が大きく、季節変動が混ざることもあります。
複数箇所を同時に変えていた場合、原因の特定は困難になります。この場合は一度すべて戻し、1つずつ変え直してください。第9章をご確認ください。
まとめ|サイト改善は「見つける・絞る・通す」の3つで決まる
手順は多くの記事で示されています。実務で止まるのは、その前後です。
最後に、今週やることを3つに絞ってお伝えします。
- 改善前の主要な数値を記録する
- 改善候補を3つに絞る
- 提案書の6項目を埋めてみる
3つ目で手が止まったら、根拠が不足しています。第3章のアプローチに戻ってください。
サイトの課題の特定や、改善の進め方でお困りの場合は、WINDOMへご相談ください。
